166-衆-決算行政監視委員会第三…-2号 平成19年04月24日

「社会保険健康センターについて」

○田島(一)分科員
 民主党の田島一成でございます。
 決算行政監視委員会第三分科会で三十分時間をいただきましたので、きょうは大臣はいらっしゃいませんけれども、武見副大臣の方に御答弁をお願いしたいと思います。
 私、過日、質問主意書も提出をさせていただいた社会保険健康センターの処分、そして、その方向についての引き続いての質問でございます。
 私、地元は滋賀県の彦根市でございます。実は、この彦根市の方にも、この社会保険健康センター、ペアーレ彦根と称する施設がございました。残念なことに廃止、それから売却ということで、地元で利用されていた方々がその存続を求めて署名活動をなさったりと、地域においては、社会運動的な形で随分世論を喚起してきたところでありました。残念なことに、ことし一月、売却ということでありましたけれども、売却先は、市内に大きな工場を持つ企業の関連会社に売却をされ、今、フィットウィル彦根という名称で新たにスタートを切り、かかわりを持たせていただいた私としても、実は胸をなでおろしているところでもあります。
 当時、このペアーレ彦根が建設されるという折、私は、当時まだ市会議員でございまして、このプールの施設であるとか中身についていろいろと提言もし、お願いをしてきたことがありました。当初は、二十メートル、五コースのプールだったんですけれども、水泳をやっている者からすると、この二十メートルのプールというのは非常に活用がしにくいんですね。やはり、二十五メートルないし五十メートルという、泳ぐ者にしてみれば計算のしやすい、そういう規定が必要だというようなことから、地元の水泳連盟等々も一緒になりまして、社会保険庁の方にお願いをして、コースを減らしてでもいいから二十五メートルにしてくれということで、結果的に二十五メートルの四コースと、一コース減ったんですけれども、コースを二十五メートルに直していただいた。
 そういうことで、水泳競技の専門的な知識をお持ちでない当時の社会保険庁にしてみれば、ある意味、私たちの地域の声ではありましたけれども、しっかりと聞き入れていただいたということから、その当時は大変感謝もし、また、その柔軟な対応に対して敬意を表したりもしてきたところでありました。
 残念なことに、今回のこの社会保険健康センター等の廃止、売却は、厚労省所管の健康保険福祉施設整理機構の方針に基づいてなされたことでありますけれども、もう一度、当時のペアーレ彦根の運営状態についてお尋ねをしたいんですけれども、実際、どんな状況でこのペアーレ彦根自体が経営をされてきたのか。私が聞き及んでいるところでは、黒字経営だというふうに地元では聞いているんですけれども、本当にうまくいっていなかったのかどうか、そのあたりの概要を説明いただきたいと思います。

○青柳政府参考人
 ただいま、ペアーレ彦根につきましての経営状況についてのお尋ねがございました。
 直近の決算が出ております、平成十七年度の決算数字をまずは申し上げますと、収入が一億二千三百万円余、そして、支出が一億二千二百万円余ということでございますので、差し引きの単年度収支差は百万円ぐらいということでございます。この間の、十七年度の延べ利用者数は、十万五千人程度の方々ということでございましたので、経営状況そのものからいえば、一応黒字の状況であったというふうに御報告できるかと思います。

○田島(一)分科員
 今回の廃止、売却に至る過程で、地元の住民であるとか自治体に対しては、一体どのような説明をされてきたのか、その経緯を教えていただけますか。

○青柳政府参考人
 この社会保険健康センターを含みます年金・健康保険福祉施設につきましては、議員御承知のように、平成十七年に独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案を成立させていただきまして、その年の十月に整理機構を設立して、整理合理化を進めているという経緯がございます。
 その際に、施設の所在地の自治体への整理合理化に当たっての説明という点につきましては、この整理機構法案を御議論いただきました際に、平成十七年の六月十五日に、衆議院の厚生労働委員会におきまして附帯決議をしていただきました。その一項目の中に、「機構は、各種施設の売却に当たっては、地元自治体とも事前に相談すること。」という一項がございました。
 この一項に基づきまして、まずは、十七年十月の独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構の発足に際しまして、社会保険庁長官より、この彦根の場合には彦根市長あてでございますが、その施設の譲渡または廃止に関する経緯を御説明し、これまでのさまざまな御協力に感謝申し上げるとともに、今後の譲渡等に当たって、機構が事前に御相談を行う旨の文書を発出させていただいております。これを受けまして、機構におきましては、同年の十一月に、彦根市に対しまして、施設の譲渡に関する意向確認を行わせていただきました。
 こういう形で、とりあえず地元とは意向確認をさせていただくということで接触をさせていただきましたが、地域住民の方々に対します個別の説明は特段行っておりませんけれども、施設の譲渡等に関しまして、社会保険庁あるいは機構のホームページにより広く公表させていただいたところでございます。

○田島(一)分科員
 今、彦根市への意向確認を十月になさったということですけれども、彦根市としては、この廃止、売却については了とするという回答であったのかどうか、それだけ確認させてください。

○青柳政府参考人
 十月の意向確認の後も、さまざまな形で彦根市の方に接触をさせていただきました。その過程の中では、彦根市から特段の意向は示されなかったものというふうに聞き及んでおります。

○田島(一)分科員
 御存じかどうかわかりませんが、実は、このペアーレ彦根の用地は、市の方で用意をしていただいた土地であります。ペアーレ彦根の周辺一帯を含んで、私ども地元では、福祉ゾーンというふうに呼んでおります。すぐ隣には屋内ゲートボール場、そして、反対側には特別養護老人ホームがあり、お向かいにはシルバー人材センターがあるといったような形で、市内の福祉施設を一挙にその一カ所に集中させてきたというゾーンでありました。
 その一角の中に、当初の福祉ゾーン計画の中にはなかったこのペアーレ彦根を、無理やりと言うのは語弊があるかもしれませんけれども、ねじ込ませたという経緯がありまして、私ども、実は市議会の中ででも、当時、その施設を入れることがこのゾーンの全体計画を壊したりしないかどうかというようなことも随分議論をしてきたところでありました。まさかこれが、十数年経過をして廃止、売却になるということはゆめゆめ思いも寄らなかったことでもありましたし、当時、十数年間の存続をした後は廃止するかもしれないなんということを御説明されたとも思ってはおりません。
 当時、これが売却をされるといううわさが市民の中を駆けめぐったとき、いろいろな方々から、この施設の跡地の買収についてのうわさが出ました。お隣の社会福祉法人、いわゆる特別養護老人ホームが買収をして施設を拡充するというようなうわさもありましたし、もう一方では、福祉ゾーンの延長線で、いわゆる冠婚葬祭、とりわけ葬祭用の用地としてこの用地が使われるんじゃないかというようなうわさすら出てきたわけであります。
 流れとして、彦根市の場合は、うまく民間企業が形態と名前を変えて、また存続した事業展開をしていただいているからよかったようなものの、場合によっては、地域住民の方々が望まない施設へと転売をされる可能性も十分にあったのではないかと、振り返らせてもらうところであります。
 そんな中で、今回の入札についてどのような条件をつけられたのか。私どもも、この整理機構の方が発行していらっしゃる入札に関する心得であるとか実施要項もくまなく拝見をさせていただきましたが、どこをどう見ても、落札後の用地、建物の使用条件というものが何一つ付されていませんでした。何でもいいから、とにかく高く買ってくれればいいんだという考え方での入札だったのか、これまでペアーレ彦根を運営されてきた経緯等も踏まえて、売却すれば全く縁がなくなっても仕方がない、もうそれが今回の機構の方針だというふうにお考えになってこの入札というものに取り組まれたのか、そのことについて、ぜひ経緯をあわせてお聞かせいただきたいと思います。

○青柳政府参考人
 今回のペアーレ彦根を含む年金・健康保険福祉施設の整理合理化に当たりましては、近年の年金制度を取り巻く社会環境あるいは国民のニーズの変化を踏まえまして、今後は、年金の、あるいは健康保険の保険料をこうした年金・健康保険福祉施設に投入しないこととするとともに、年金資金等の損失を最小化するという考え方のもとに、民間への譲渡等による整理合理化を進める、これがそもそもの大方針でございました。
 そういう状況の中で、入札に当たりましては、ただいま申し上げた年金資金への損失の最小化という観点からは、原則一般競争入札による、したがって必要以上に何か条件を付さないということが大方針として打ち立てられたわけでございます。
 ただ、地元の自治体には、私どもとしては、ただいま議員の方からも個別の御紹介ございましたように、これまで施設の設置、運営に当たりましては多大な御協力をいただいた、あるいは御支援をいただいたという経緯については十分に存じ上げているつもりでございますので、先ほども申し上げましたように、社会保険庁長官から、まずはお礼とあわせて今回の経緯を御説明するとともに、また、自治体と事前に相談して、その際に、例えば自治体の方として、こういう用途に使ってもらえればこういう条件を付すことはできる、一例を挙げますと、例えば地方税の減免みたいなことも含めてでございますけれども、そういった情報提供を、もししていただけるものがあれば幅広に情報提供させていただくということで、そういうことを踏まえて、なるべく地元の意向も反映できるようにということで努めさせていただいております。
 繰り返しになりますけれども、そもそもの今回のこの施設の整理合理化の大方針は、先ほども申し上げましたように、年金資金への損失の最小化ということがございましたので、そういう点を踏まえての原則一般競争入札というルールであることを、ぜひとも御理解賜りたいと存じます。

○田島(一)分科員
 そもそも、負担を極力少なくしていきたいという社会保険庁の考え方と、何のためにこのセンターという施設をつくったのかという目的が、当初の目的と随分大きな違いが出てきているわけですね。そのことについては、お認めいただいていますか。

○青柳政府参考人
 平成十六年の年金制度改革の際に、私どもの従来の福祉施設を含むさまざまな事業執行についての不適切な点を、各方面から御批判いただきました。
 私どもとしては、年金の、あるいは健康保険の福祉施設は、これまで被保険者の方々への福祉という観点から一定の役割を果たしてきたということは十分理解をしておるつもりでございます。しかし、それを今後とも続けることについてはいかがかということから、先ほど御紹介をさせていただきました機構の法案というものもでき、国会でこれを成立させていただいたという経緯がございますので、私どもとしては、現時点においては、このような形で福祉施設といったようなものの運営を継続するということは、やはり不適切なのではないかというふうに判断した次第でございます。

○田島(一)分科員
 今回、私がこの問題をあえて決算行政監視委員会で取り上げたのは、地元の問題だからというだけではございません。昨年十月、日経新聞で、「肥満 成人男性の三割」そして「国の健康運動実らず」という大変ショッキングなタイトルの新聞記事を拝見したのがまずそもそもの最初でした。
 これは、実は厚労省が進めていらっしゃる国の健康づくり運動、健康日本21で掲げている目標値に対する中間実績値を公表した結果の新聞記事であります。成人男性の三割が肥満だ、しかも、国の健康運動が実らないとまで新聞に評されてしまった厚生労働省が中心となってやっているこの健康づくり運動、健康日本21、こういったことが起こらないようにということで、被保険者の福祉の一環としてこうしたペアーレ彦根などの社会保険健康センター等が運営されてきたことは紛れもない事実だというふうに思うわけであります。
 今、いみじくも運営部長が、一定の成果が上がったというふうに堂々とおっしゃいましたけれども、一定の成果が上がりながら、どうして国の健康運動が実らずというふうに新聞で評されてしまうのか。私は、どう考えても成果が上がったとは思えないわけであります。当初策定されてきた健康日本21の目標値、この目標値に達していないということが判明したこの中間実績値ですけれども、果たして、国民の健康づくりという観点から見たとき、この運動推進をするステージとして社会保険健康センター等々があったはずであるにもかかわらず、このような形で、一定の成果があったというふうにして廃止していく。
 そもそも、この健康日本21という国民運動自体がまだまだ国民には広く認知をされていないというふうに私も感じているわけですけれども、副大臣、いかがお考えですか。厚生労働省で進めていらっしゃることと、社会保険庁がそれに反して、もう成果が上がったからといって切り捨てていこうとしているこの状況、厚生労働省の副大臣というお立場からすると、この健康日本21が本当にここまで進んできているのか。また、国民の健康づくり運動として展開されてきているけれども、それの成果が上がっていないことを考えると、そのステージが廃止されるということは、事業展開をする側としては大変矛盾をしていると私は思うんですけれども、所感としてぜひお聞かせいただきたいと思います。

○武見副大臣
 この健康日本21については、つい最近に中間評価というものもまとめられて、その中で、実際、御指摘のとおり、三十一項目については好転していないということがはっきりと指摘をされました。
 その理由として、総花主義的でターゲットが不明確であったこと、それから、目標達成に向けた効果的なプログラムやツールの展開が不十分であったことといったようなことが挙げられておりまして、これはもう当然、行政を先頭に、そうした指摘を受けて、克服のための努力というものは徹底的にこれからやり直さなければいけないだろうというふうに思っております。
 こうした中で、例えば歯の健康とか、それから女性の肥満については、実は好転した指標も出ておりますので、そういった点はさらに取り組みを推進していきたいというふうに思っているところであります。
 それを受けて、これは最終年度二〇一〇年でございますので、まず、二〇一〇年に向けて、さらなる取り組みを全般的に改めて強化をしていかなければならないという基本的な考え方がございます。
 その上で、ペアーレ彦根でございますか、社会保険庁が委託運営していた施設という点についてでございますけれども、これはもう今まで青柳部長が説明してきているとおりでございまして、まず基本的に、こうした年金財政及び健康保険の財政といったような極めて厳しい財政状況のもとにおいて、その保険料というものについては、やはりそれを年金及び健康保険といったものの所期の目的のために本来充てるべきであって、それ以外の目的のためにこうした保険料財源を使うということについては、もはや国民の理解が得られなくなった。
 そして、特にそのきっかけとなったのが、いわゆる社会保険庁のさまざまな不祥事であって、かつまた、特別会計の財源の中からこうした施設を実際に全国各地さまざまなところに設立をした、しかし、その多くが実は赤字になり、かつまた持続可能性を失うような状況下に陥っていったこと、そして、そうした状況下というものの中で、実際に社会保険庁全体に対する国民の信頼感が失われてしまった。
 そして、社会保険庁という役所自体が、いよいよこれは解体すべき対象だということでこの法案の御議論をいただくという状況になった今日において、改めて、こうした施設というもののあり方についても、やはり、もはやこれを保険料というものを財源として運営するというようなことは国民の理解は得られないというふうに私ども今考えているところであります。
 その上で、実際にこうした施設というものについて、そうした彦根等、お地元でも実際にスポーツ施設等で活用されてきたという経緯があったということであれば、それができる限り活用されるような形で実際にそうした施設の整備というものが行われることが、これが好ましいということになっていくのではないかというふうに私は思います。

○田島(一)分科員
 副大臣、私が冒頭にお尋ねして御回答いただいたとおり、例えばこのペアーレ彦根についての決算状況をごらんいただいても、赤字は出ていないんですね。非常に健全に、また利用者も彦根市民の人口とほぼ同じ数の利用者を誇るぐらい、そういう意味では非常に地域では愛されてきた施設であります。
 赤字が出ている施設ならばまだしも、黒字である地、その施設まで、運営不可能というふうにして、社保庁のさまざまな問題のしわ寄せを押しつける、これは余りに不平等な印象を私は持ちました。赤字である施設ならば、その進退として廃止、売却は筋が通る、納得もしてもらえると思います。しかし、赤字も出していない、健全に経営をしてきた、運営してきた施設にまでその飛び火が行くということはいかがなものかというのが一点。
 それともう一つは、とにかく赤字を解消するために売却していくというのに百歩譲ってうなずくとするならば、例えば、せめて健康日本21の国民運動に少しでも寄与するように、売却に関しては、一般競争入札に付するにしても、やはり一定の条件をつけて、同じようにその施設が持つ機能をそのまま存続していくという条件をつけるべきではなかったかな、そうすることによって、健康日本21の国民運動と社保庁の問題とを一緒に、納得していただける展開ができたんじゃないかなというふうに私は思うんです。
 あちらを立てればこちらが立たない、こちらを立てればあちらが立たない、これは政治の課題ではよくあることでありますが、その両方のいいところをとって、地域の人にも理解をしてもらえる三方よしの政治決断をするべきではなかったかなということを今回どうしても私は申し上げたかったんですが、副大臣、いかがですか。私の言っていることは間違っているでしょうか。


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